SS-520-2号機ロケット実験におけるプラズマ波動観測
*上田 義勝[1], 小嶋 浩嗣[1], 松本 紘[1], 橋本 弘藏[1]
長野 勇[2], 岡田 敏美[3], 向井 利典[4], 岩井 宏徳[5]
藤原 亮介[1]
京都大学宙空電波科学研究センター[1]
金沢大学工学部情報システム工学科[2]
富山県立大学工学部電子情報工学科[3]
文部科学省 宇宙科学研究所[4]
独立行政法人 通信総合研究所[5]
Plasma Wave Observation in the Polar Region via SS-520-2 Rocket Experiment
*Yoshikatsu Ueda[1]
,Hirotsugu Kojima [1]
Hiroshi Matsumoto [1],Kozo Hashimoto [1],Isamu Nagano [2]
Toshimi Okada [3],Toshifumi Mukai [4],Hironori Iwai [5]
Ryosuke Fujiwara [1]
Radio Science Center for Space and Atmosphere, Kyoto University[1]
Dept. of Electrical and Computer Eng., Kanazawa Univ.[2]
Dept. of Electronics and Informatics,Toyama Prefectural Univ.[3]
The Inst. of Space and Astronautical Science[4]
Communications Research Laboratory[5]
On the SS-520-2 rocket experiment,we succeeded in observing the
high quality waveform and spectrum data by the onboard plasma
wave analyzer with the high time resolution. We observe the ion
cyclotron harmonic(ICH) emissions with strong auroral hiss. We
can roughly estimate ICH wave velocity & propagation direction
on the antenna plane using the interferometry method. The features
of the observed ICH emissions are similar to those of the ICH
emissions reported by S3-3 satellite and NASA sounding rocket.
We proceed the further detailed data analysis and discuss the
generation mechanism of the ICH emissions consulting plasma measurement
data.
地球磁気圏の極域上空に位置するカスプ領域
では、水素イオンや電子のほかに、電離圏の
酸素イオンなどの重イオンも磁気圏外部へ向
かって流出する現象がしばしば観測されてい
る。従来の理論では、水素イオン等の軽イオン
が脱出速度(第一宇宙速度)以上に加速され
地球から脱出することは可能であるが、酸素
などの重イオンの場合は地球重力の束縛の為
に脱出不可能とされてきた。そのため、カス
プ領域内では従来の理論とは別の特別な加速、
加熱機構が働いていると考えられている。この
重イオン加速、加熱機構を解明するため、宇
宙科学研究所と関係研究機関が協力して、SS- 520-2号機ロケット実験を2000年12月4日にノ
ルウェーのSvalbard諸島にあるNy-Alesundに
て行った。このロケット実験は、カスプ領域
でのイオンの加速、加熱にかかわる粒子観測
とプラズマ波動観測に重点を置き、これらの
観測を高時間分解能で行うことにより、加速
、加熱のメカニズムを十分捕らえることが出
来る仕様となっている。
我々は、このロケット実験の中のプラズマ波動受信機
(Plasma Wave Analyzer、PWA)を担当した。
PWAでは、主にイオンのダイナミクスが支配的となる
周波数領域に的を
絞った波形受信機と電子の周波数領域を見るスペクトル受
信機からなる.
カスプ域における電子密度は、他のロケット実験などを参考にして最大50000個/ccと想定される
ので、電子プラズマ周波数を2.0MHz、水素イオンを47kHz、酸素イオンのそれを
11.7kHzと算定され、同様にサイクロトロン周波数もそれぞれについて、1MHz、
600Hz、37Hzと算定される.そのため、これらの周波数をターゲットとして受信機
を設計した.
ロケット実験は成功裡に終了し, 予定通り約1100秒間のデータの取得に成功した.
PWAで得られた観測データは現在も鋭意解析が行われている.
現在までに判明している物理現象としては、VLF帯域に観測されている強い強度のオーロラヒスと共に、水素イオンのサイクロトロン周波数の高次(5次以上)の高調波成分が観測されることがわかっている. この高調波成分はオーロラヒスと共に観測される時や、ヒスよりも周波数の低い部分で卓越して観測されることもあり、非常に興味深い現象であると考えられる.